信用保証協会 完全攻略マニュアル(上級編)

初級編・中級編では保証協会のことや保証協会と銀行の関係などについて説明しました。


上級編は保証協会の枠があるにもかかわらず、保証協会付き融資でも借入が厳しい企業に
向けた、融資を引き出すテクニックをお伝えしていきます。

 

ただし、テクニックと言っても、裏技やウルトラCがあるわけではありません。

 

「当たり前のことを当たり前にする。」
これが最も効果的なので、ごくごくベーシックな部分をお伝えします。

書類の重要性を理解する

 

まず押さえておきたいのは、保証協会付き融資であろうとも、
お金を実際に貸すのは銀行であるということです。

融資を受けようと思ったら、入口である銀行をその気にさせることが重要です。

大切なのは書類

融資を受けるにあたり銀行に対して有効な手段は、何と言っても書類です。
プロパー融資を受けるときはもちろんですが、保証協会付き融資であっても、
変わりま
せん。

融資は、申込を受けた担当銀行員が、その可否を判断するわけではありません。
融資の申込を受けると、その詳細を稟議書という定型フォーマットに落とし込み
ます

この様に御社とまったく面識のない人が判断を下すわけです。

つまり、稟議は伝言ゲームです。
 

そのため、担当銀行員にいかにいい稟議書を作ってもらうかが、融資可否の勝負の分かれ        
目となります。
  

 

考えてみてください。
いつもやりとりする担当銀行員は、経験が豊富にありそうな人でしょうか?


稟議書を書く銀行員は、たいていは平社員です。
ここから考えると、稟議書を書く銀行員は若手の平社員で、
稟議書を書いた経験が多くない人という人物像が浮かび上がります。

 

本来、稟議書は融資審査を通すためにあるものです。


その内容は、支店長や本部の部長といった決裁者が
「この企業に対してなら融資を出しても良い」と思わせるものでなければなりません。

 

そのためには、企業から担当銀行員に、稟議書を書くための材料を多く提供してあげるこ とが大事です。

 

稟議書にそのまま資料として添付してもらえるような書類を提出するのが一番賢い方法なのです。    

準備すべき書類

【手続上必要な書類】

・信用保証委託申込書、信用保証委託契約書
・個人情報の取扱いに関する同意書
・確定申告書
・決算書
・商業登記簿謄本 など

 

【準備すると有利になる書類】

・事業計画書
資金繰り予定表
5年分の損益予定表
・合計残高試算表
借入一覧表 など

これらの書類は令和6年4月以降、保証協会付きであろうとなかろうと、
銀行からお
金を借りようと思ったら、要求される企業が増えるかと思います。

 

もし要求されなかったにしても、自ら提出することで銀行からの心証はぐっと良くなります。

 

銀行は貸したお金が確実に返ってくるかどうかを気にしますので、
貸す会社のこれまで・現在・これからの経営状況が気になるのは当然です

 

こういった経営状況は、上記書類で判断することができます。

なぜ資金繰り予定表を提出するのか?

資金繰り予定表には銀行員が知りたい情報が詰まっているからです。

 

資金繰り表には資金の入り口と出口がすべて記載されるので、借りたお金が何に使われ、
またどのように返済されるかが分かります。
(資金使途・資金効果(返済財源)・返済可能性の説明となります。)

 

定期的に資金繰り表を銀行に提出している会社は、そうでない会社に比べ、
融資が下りやすくなります。

 

最低でも半期に一回程度、自主的に資金繰り表を作成し、提出することをおススメします。

銀行員が喜ぶ借入一覧表

「金融機関別借入一覧表」とは、現在融資を受けている金融機関ごとの借入残高、毎月の返済額、担保の保全状況などを一覧表にしたものです。

 

提出すれば、担当銀行員はとても喜ぶはずです。

 

なぜなら、銀行はほかの金融機関の思惑を探りたいからです。
銀行が知りたいのは、借入残高だけではありません。

・担保を入れているかどうか

・保証協会付きがどうか

・プロパー融資を出しているかどうか

・長期はどういった形で貸しているのか

など、ほかの銀行の貸し方を知りたいのです。

 

貸し方が分かると、それぞれの銀行が何を考え、どのような姿勢で融資に取り組んでいるかを把握することができます。

 

だから私は、「金融機関別借入一覧表を提供することは、銀行に対する親切心ですよ」と
お客さんに話し、作成・提出することをおススメしています。

①    金融機関名:どの銀行から何本借りているか記入します

②    長短別:借入期間が長期か短期か記入します

③    借入額:いくら借り入れたかを1本ごとに記入します

④    借入日:いつ借り入れたのか記入します

⑤    借入期間:返済期間を記入します

⑥    返済期日:いつ完済するのか記入します

⑦    返済日:毎月何日に返済するか記入します

⑧    返済条件:借入時に銀行と約束する返済方法を記入します

⑨    約定返済額:毎月いくら返済するかを記入します

⑩    金利:適用金利を記入します

⑪    担保等:プロパー、担保有無、保証協会か記入します

⑫    資金使途:何のために借入したか記入します

⑬    現残高:作成日の借入残高を記入します

銀行間で情報のやりとりはしない

意外に思われるかもしれませんが、銀行同士で直接連絡を取り合うことはありません。

当然、自行のお客さんが他の銀行とどの様な取引をしているのか、知ることもないのです。

 

しかし、他の銀行の情報はノドから手が出るほど欲しい、当然気にしています。

そんな銀行の欲求に応えるのが、金融機関別借入一覧表です。

 

金融機関別借入一覧表を提出することによって、自社の融資状況をオープンにします。
すると、銀行も安心して取引ができるようになるわけです。

 

ただし、粉飾している場合は話が違います。
他の書類との整合性が取れないなんてことになったら、一発アウトです。

 

もちろん、保証協会も粉飾を見抜きますので、ご注意ください。

交渉のポイント(資金使途)

銀行が融資の可否を決める3ポイントは何でしょうか?

資金使途・返済財源・保全です。

保証協会付き融資を受けるときにも、この3つのポイントを踏まえて交渉していきます。

「資金使途」で融資可否の5割は決まる

資金使途・返済財源・保全のうち、
一番大事なのが資金使途です。

融資可否の5割以上は、この資金使途が占めます。

不良債権になった理由を細かく調べると、
その多くが使い途にあったからです。

 

子どもが親にお小遣いをねだるときも同じです。

 

必ず親は「何に使うの?」と聞くはずです。


「参考書を買う」というのであれば、喜んでお金を出してくれます。

ところが「ゲームセンターに行って遊ぶ」ではどうでしょう?

 

簡単には出してくれないはずです。親は自分の人生経験に照らし合わせて、
「生きたお金になるのか、死に金になるのか」を判断し、お小遣いを渡すか否かを決めます。

資金使途でウソをついてはいけない

銀行からすると、融資を申し込んでくるお客さんは、お小遣いをねだりに来る子どもと似て見えると思います。

だから、銀行は融資の使い途を細かく聞いてくるのです。

 

設備資金なのか?

運転資金なのか?

 

設備でも運転でも前向きな資金なのか、後ろ向きな資金なのか?

 

銀行は貸したお金を返してもらうことを第一に考えますので、資金使途を見極めた上で融資を出します。

 

さて、肝心の交渉のポイントは資金使途に関して、すべてを明らかにすること。
言い方を変えれば、ウソをつかないということです。

 

ウソをついてお金を借りても、必ずツケが回ってきます。

 

資金使途をきちんと管理されている会社ほど、返済財源も確保できるようになります。
それは、よく考えてお金を回していくからです。

 

逆に使い途がアバウトな会社ほど、資金繰りに苦労することが多いです。

交渉のポイント(返済財源)

2つ目の交渉ポイントは返済財源です。

返済財源は証拠を見せる

事業計画書と資金繰り予定表を作って提出し、きちんと返済できますという証拠を銀行に見せましょう。

 

1年以内の短期融資なら、事業計画書はなくても良いと思います。

 

 

長期融資の場合は上記2点に加えて、3年から5年の損益予定表をプラスすると効果的です。

交渉のポイント(保全と担保)

最後の交渉ポイントは保全と担保です。

 

保証協会付きの融資枠には、無担保枠と有担保枠の2つあることを中級編でお伝えしました。

 

無担保枠は通常8,000万円、これとは別に有担保の枠が設けられており、
こちらの保証限度額は通常2億円です。

 

よって、併せて28,000万円の保証協会付き融資が受けられることになります。

有担保の考え方

保証協会と言えば、無担保のイメージがあるかも知れませんが、有担保の取引も存在します。

 

担保の条件は、3つに分けることができます。

優先

同条件

劣後

これは、銀行と保証協会間での担保の配分の仕方を示しています。

 

少し分かりにくいと思いますので、具体的に数字をあげて説明します。

 

有担保枠を使って、1,000万円の融資を受けた会社があったとします。
ところが、売上が思ったように伸びず、返済が滞り、倒産してしまったとしましょう。

 

この場合、担保条件ごとに債権はどうなるでしょうか。

 

【優先】

優先担保の場合、1,000万円の融資が吹っ飛んだら、担保を換金処分した全額(最大1,000万円)が銀行に入ります。

 

しかし、担保条件が優先になっている場合は、まず保証協会に1,000万円を渡し、
銀行は1円も取れないことになります。

 

このように優先とは、まず保証協会が優先的に担保をもらう考え方です。

 

【同条件】

同条件担保の場合、1,000万円の融資が吹っ飛んだら、担保を1,000万円で換金処分できれば、銀行と保証協会で500万円ずつ分けます。

 

もし、担保が600万円にしかならなければ、それを2で割って、300万円ずつ分け合うことになります。

 

このように同条件とは、銀行と保証協会で公平に分けようという考え方です。

 

【劣後】

劣後担保は、優先とは逆の考え方です。銀行が保証協会に優先して担保をもらいます

 

保証協会からすると、一番悪い条件と言えるでしょう。

 

銀行に700万円の債権があって、担保が600万円でしか売れなければ、
保証協会には1円も入りません。

 

600万円すべてを銀行がもらうことになります。

有担保の決定権を持つのは誰か?

有担保の条件には、優先・同条件・劣後の3つあるわけですが、それらの条件に関して決定権を持っているのは誰でしょうか?

 

銀行でしょうか? それとも保証協会でしょうか?

 

答えは、銀行です。
保証協会ではありません。

 

「今回は保証協会に優先で与えよう。ただし、上限500万円」

「いや、今回は同条件で担保権をあげようか」

「劣後にしようか」

銀行がこうした判断を下した上で、保証協会と協議します。

 

融資を受ける企業としては、保証協会の保証が受けやすいように、優先か同条件で話を進めたいところでしょう。

 

ところが、決定権を持っているのは銀行なのです。

どうすればいいでしょうか。

 

まず、有担保枠には優先・同条件・劣後という条件があるという認識を持ってください。
その上で、担当銀行員に伝えてみましょう。

 

「今回は有担保枠でもいいですから、何とか保証協会を優先にしてもらえませんか?」

 

何度も言いますが、最終的に判断するのは銀行です。

しかし、この一言で担当銀行員に大きなプレッシャーがかけられます。

 

 

経営者の口から優先という言葉が出た途端、「ギョッ!」とした顔を見せ、何かを考え始めるでしょう。

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