信用保証協会 完全攻略マニュアル(中級編)

銀行から融資を受ける中小零細企業の大半は、信用保証協会の保証を受けています。
ところが、ほとんどの経営者は信用保証協会のことをご存じありません。

 

銀行から、

 

 「信用保証協会付きなら、融資可能です。」

 「とりあえず信用保証協会付きでお願いします。」

と言われたので、利用していますという経営者が大半です。

 

令和6年4月以降、銀行によるコロナ禍の資金繰り支援は
特別扱いを終え、通常運転に戻ります。 

 

売上は回復しているものの、物価高・人手不足等の影響により、
利益を十分に確保できず、資金繰りが苦しい企業も多いことと思います。 

 

その場合、信用保証協会の戦略的な活用が重要となります。

そこで、3回(初級編・中級編・上級編)に分けて信用保証協会について、徹底解説します。

責任共有制度とは?

平成1910月から、銀行と保証協会で責任を分担する「責任共有制度」が導入されました。

従来、原則100%保証(全部保証)であった保証付き融資について、銀行が一定のリスクを負担する仕組みに変更されたもので、「部分保証方式」と「負担金方式」の2つの方式があります。

銀行が2つのうちからいずれかを選択して採用することとなっています。

銀行の負担割合は?

銀行の責任負担割合は2、保証協会は8割となります。銀行の負担割合はいずれの方式においても同じです。

たとえば1,000万円の融資が回収不能となった場合、200万円が銀行の負担になるということです。

つまり、責任共有制度が適用される保証制度では、融資金額の20%はプロパー融資と同じ扱いとなり、銀行内での審査ハードルが上がります。

原則すべての保証が責任共有制度の対象となりますが、一部例外的に除外される制度があります。

(1)セーフティネット保証 1号〜4号、6号

(2)災害関係保証

(3)創業関連保証(再挑戦支援保証、スタートアップ創出促進保証制度を含む)

(4)特別小口保険に係る保証

(5)事業再生保証

(6)小口零細企業保証

(7)求償権消滅保証

(8)中堅企業特別保証

(9)東日本大震災復興緊急保証

10)事業再生計画実施関連保証(注1

11)危機関連保証

12)事業再生計画実施関連保証(感染症対応型)(注2

13)伴走支援型特別保証制度(コロナ融資借換保証制度)(注3

(注1)責任共有制度の対象除外となる信用保証協会の保証付きの既往借入金を同額以内で借   
    り換える場合に限ります。

(注2)責任共有制度の対象除外となる信用保証協会の保証付きの既往借入金、または経営                安定関連保証(セーフティネット保証)5号(新型コロナウイルス感染症に係る危機              関連保証の指定期間内に保証申込から融資実行までされたものに限る。)を同額以内              で借り換える場合に限ります。

(注3)経営安定関連保証( セーフティネット保証)4号の認定書を用いて利用する場合、                または責任共有制度の対象除外となる既往借入金を同額以内で借り換える場合に限                ります。

 

どの保証制度を使うか?

保証協会には目的別に様々な保証制度が用意されています。

どの保証制度を使うかは、企業自身で選ぶことができます。

 

ところが、ほとんどの経営者はどんな保証制度が存在するか、
保証制度ごとに内容が異なることをご存じありません。

 

そのため、銀行が勧めるままに利用されていることと思います。

 

どのような保証制度があり、内容はどうなっているのか?
自社にピッタリな保証制度はどれか?

 

いろいろな保証制度を比較し、自社にとって一番有利な保証制度を選んでいただきたいと
思います。

どんな保証制度が出ているかは、毎年5月に発行される中小企業金融のしおり
信用保証協会のホームページで確認することができます。

重要なことは、

・資金を必要としている理由(資金使途)

・どうやって返すのか(返済原資)

・いくら必要か(金額)

を明確にした上で、資金繰りの面でどのように資金調達するかがベストかを検討し、
戦略的に利用する保証制度を選択することです。

保証協会の『枠』を理解する

保証協会の保証には、融資の上限額である「限度枠」が設定されています。

これを保証限度額といいます。

 

一般的には、省略してと呼ぶことが多いです。

コロナ禍における保証限度額は以下の通りです。

【一般枠】

いつでも利用できる枠です。

 

【セーフティネット枠】

新型コロナウイルス感染症による影響をはじめ、取引先の倒産や事業活動の制限、災害、取引金融機関の破綻、大規模な経済危機等の場合に、経営を安定させるため、一般枠とは別に設定される保証枠です。

各種要因により次のように1号から8号まで分類されています。

1号認定 連鎖倒産防止(大型倒産の発生により影響を受けている)
2号認定 取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
3号認定 突発的災害(事故など)
4号認定 新型コロナ 突発的災害(自然災害など)
5号認定 新型コロナ 業況の悪化している業種(全国的)
6号認定 取引金融機関の破綻
7号認定 

金融機関の相当程度の経営の合理化(支店の削減等)に伴う金融取引の調整

8号認定 金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡

【危機関連保証枠】

新型コロナウイルス感染症による影響をはじめ、リーマンショックや東日本大震災時等と同程度の大規模な経済危機・災害等による信用収縮が全国的に生じ、売上高等が減少する等、経営の安定に支障が生じている中小企業・小規模事業者向けの保証制度です。

一般枠、セーフティネット枠とは別に設定される保証枠です。

保証協会を使うと、いくらまで貸してもらえるか?

誰もが「枠」いっぱいの保証を受けられるわけではない

無担保枠8,000万円等の保証限度額は、誰もが無条件で枠いっぱいの保証を受けられるわけではありません。

 

弊社に相談に来る経営者の中にも、いらっしゃいます。

「うちは保証協会付きの融資を3,000万円しか使っていません。

 まだ、無担保枠が5,000万円残っているはずです。

 それなのに追加融資を申し込んだら、ダメと言われました。なぜですか?」

 

こう思われることは自然なことかも知れません。

みなさん、会社を作ったら、8,000万円の枠が自動的についてくるようなイメージをお持ちのようです。

 

限度額8,000万円を上限とはしていますが、それはあくまでの上限です。

 

実質的な借入上限額は月商倍率というもので決まります。

 

そのため、誰でも同じ「枠」がもらえるわけではありません。

融資限度額が決まる「月商倍率」とは

では月商倍率について、説明します。

 

たとえば年商6億円、単純計算して月商5,000万円のA社があったとします。

A社は銀行から2億円の融資を受けています。

この場合、借入の月商倍率は何か月になるでしょうか?

 

 2億円÷5,000万円=4なので、4か月が正解です。

 

通常、保証協会の保証限度額は、この月数で青信号・黄信号・赤信号と判断されます。

業種によって判断基準は多少異なりますが、運転資金で考えた場合、借入月商倍率が  

 3か月までは青信号

 34か月までは黄信号

 4か月以上になると赤信号

と言われています。

つまり年商6億円の会社が、すでに3億円以上の銀行融資を受けている場合、
保証協会が付こうが付くまいと、すべて審査の対象外とみなされる可能性が高いです。

 

A社の場合、ほぼ赤信号に近い黄信号です。仮に1,000万円の追加融資の申し込みをしたら、現段階で月商倍率は4か月を超えて、レッドゾーンに突入してしまいます。

 

こうなると保証協会の限度額がどれだけ残っていても保証は受けられません。

月商倍率による判定は業種により異なります。以下に目安を挙げます。

業種 青信号 黄信号 赤信号
小売業 3か月以内 4か月以内 4か月超
卸売業 2.5か月以内 3.5か月以内

3.5か月超

製造業 4か月内 6か月以内 6か月超
建設業 6か月以内 7か月以内 7か月超
運送業 4か月以内 6か月以内 6か月超
IT業 2.5か月以内 3.5か月以内 3.5か月超
サービス業 3か月以内 4か月内 4か月超

*この借入月商倍率は運転資金および設備投資資金を含みます。

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