信用保証協会 完全攻略マニュアル(初級編)

銀行から融資を受ける中小零細企業の大半は、信用保証協会の保証を受けています。
ところが、ほとんどの経営者は信用保証協会のことをご存じありません。

 

銀行から、

 「信用保証協会付きなら、融資可能です。」

 「とりあえず信用保証協会付きでお願いします。」

と言われたので、利用していますという経営者が大半です。

 

令和64月以降、銀行によるコロナ禍の資金繰り支援は
特別扱いを終え、通常運転に戻ります。

 

売上は回復しているものの、物価高・人手不足等の影響により、
利益を十分に確保できず、資金繰りが苦しい企業も多いことと思います。

 

その場合、信用保証協会の戦略的な活用が重要となります。

 

そこで、3回(初級編・中級編・上級編)に分けて信用保証協会について、徹底解説します。

信用保証協会とは何か?

まずは、信用保証協会(以下、保証協会)が果たす役割から見ていきましょう。

 

保証協会を銀行側から見ると、保険にあたります。

あるいは担保と言い換えてもいいでしょう。

 

例えば、こんなお客さんが融資を申込にきたとします。

 

・新規の融資取引

 

・業歴が浅い

 

・会社にも経営者個人にも資産がない

 

銀行はこうしたお客さんにお金を貸したがりません。

 

 

いくら会社の規模が小さく、業歴が浅かったとしても、

事業を展開していれば、資金需要だって生まれてきます。

 

 

そこで登場するのが保証協会です。

 

万が一、貸し倒れたとしても、融資残高の80%や100%を
保証協会が肩代わり(代位弁済)してくれます。

 

保証協会が銀行にとっての保険というのは、こういうわけです。

では、お金を借りる企業側から見たらどうでしょうか?

 

企業にとって、保証協会は融資をスムーズに引き出す
ための促進剤と言えるでしょう。

 

単体では銀行が形式的な審査しかしない企業であっても保証協会の保証が付くことで、
融資を受けられる可能性がグーンと高まるわけです。

 

そう思うと、保証協会は融資を受ける企業にとっても、
融資を出す銀行にとっても、大変ありがたい存在に見えてきますね。

利用のながれ

お金を借りる際、企業が銀行に融資申込をします。

 

審査を経て融資実行、返済というのが、
銀行が独自審査で融資を出す「プロパー融資」です。

 

ここに保証協会が入ってきたとしても、基本的な流れが変わることはありません。

 

銀行に融資相談をし、保証協会へ保証依頼の申請書を書くステップが増えるだけです。

 

保証協会と銀行は業務委託契約を結んでいるので、原則、銀行がすべての窓口になります。

 

そのため、融資を申し込んだ企業が直接、保証協会と書類のやり取りをしたり、
交渉するといったことはまずありません。

 

保証付き融資では、保証協会と銀行の双方の審査を受けることになります。

企業・銀行・保証協会との関係とは

企業・銀行・保証協会の関係を図で表すと、以下のようになります。

保証協会はどこにあるか?

現在、保証協会は各都道府県に1法人、
プラス横浜、川崎、名古屋、岐阜の各都市に1法人ずつ、
日本全国に51法人があります。

 

各法人には、いくつかの本支店(窓口)があり、
京都信用保証協会は、京都市内に本所(本店)のほかに、
宇治市、亀岡市、福知山市、京丹後市に支所(支店)があります。

 

それぞれの保証協会は全国信用保証協会連合会に属しており、
オンラインシステムでつながっています。

企業所在地で利用する保証協会が決まる

どの保証協会を利用するかは、融資を受ける企業の所在地によって決まるため、
ほぼ選択肢はありません。

 

例えば、京都府に会社があれば「京都信用保証協会」、
滋賀県に会社があれば「滋賀県信用保証協会」しか
利用できないようになっています。

 

所在地といっても、それが「本社」である必要はありません。
支店でも工場でも構わないし、支店登記していなくても、
納税証明書があれば、保証協会を利用することができます。

 

各自治体が保証料補助や金利補助をしているケースがあり、
保証協会によって使える保証制度が違います。

 

他府県の保証協会を利用するメリットが大きければ、
メリットのある保証協会を付き合う策を取ればいいのです。

 

ただし、付き合う保証協会が増えたからといって、
保証限度額が増えるわけではありません。

誰が・いくら保証料を払うのか?

誰が保証料を払うのか?

保証協会も、タダで「保証」をしてくれるわけではありません。

保証料が発生します。

 

では、その保証料はいったい誰が払うのでしょうか?

 

銀行でも保証協会でもなく、融資を受ける企業が払います。

 

保証協会付き融資を受けている経営者は、すでにお支払しているはずです。 

 

通常は保証料を差し引いた金額が、融資実行時に振込されるため、
分かりにくくなっています。

 

銀行の貸倒を減らすために保険をかけるのだから、
本来なら銀行が保証料を払うのでは筋ではありませんか?

 

けれど、お金を借りる企業が払います。

 

銀行は、「ウチは融資を出してあげているんだから、
その保証料をお客さんが払うのは当たり前じゃないですか」と考えています。

 

経営者からすると何とも理不尽です。

でも、これが保証協会付き融資なのです。

 

金利に保証料を上乗せされた調達コストの高いお金が、保証協会付き融資なのです

保証料はいくらかかるのか?

 企業が支払う保証料(率)は一律ではありません。

 

保証料は、利用する保証制度や融資を受ける企業の
財務状態によって違ってきます。

 

保証料率は財務状態に応じて、9段階に分かれています。
(借入残高に対し、年率0.5~2.2%程度)

 

保証料率の算出に使われるのが、
「中小企業信用リスク情報データベース(CRD)」です。

  

これは中小企業庁が中心となって作成されたシステムで、
中小企業に関する日本最大のデータベースです。

 

CRDのスコアは、独立行政法人中小企業基盤整備機構のホームぺージにある
『経営自己診断システム』で調べることが
できるので、
ぜひ一度、お調べになることをおススメします。

保証料は、京都信用保証協会のホームページでシミュレーション可能です。

なぜ銀行は保証協会が好きなのか?

融資の保険効果が高いから

保証協会付き融資であれば、貸し倒れが発生したとしても、
銀行がかぶるのは最大でも残債の20%です。

 

確かに保証協会が付くと、融資を受けやすくなるメリットはあります。

 

しかし返済が滞って代位弁済(肩代わり)されても、
融資を受けた企業の借金が減るわけではありません。

 

代位弁済後は保証協会に対して、返済することになります。
(このことを求償権返済を言います。)

 

また、代位弁済されれば遅延損害金が発生して、借金の残高が増えてしまいます。

 

つまり、融資を受けた企業に対しては何の保険もかかっていないということなのです。

銀行の利益保全に役立つから

通常、銀行はプロパー融資でお金を貸すと、貸した金額の一定割合を
万が一、返してもらえなかったときのためにプールしなくてはなりません。
(これを貸倒引当金といいます。)

 

貸倒引当金は、お金を貸した企業のランクによって割合が変わりますが、
このランク付けが自己査定と呼ばれるものです。

 

つまりお金を貸した企業のランクが下がれば(自己査定が下がれば)、
銀行は万が一のときのための貸倒引当金をより多くプールする必要があります。

 

ですが、保証協会付き融資であれば、返済が滞ったとしても、
信用保証協会による保険があるため、自己査定を引き下げる必要がありません。

 

貸倒引当金は銀行の利益から捻出します。
金利収入や手数料収入などで、コツコツ積み上げた利益をかすめ取ることになります。

 

ところが、保証協会を利用すると、企業の自己査定が下がりにくくなるので、
プールする貸倒引当金も少なくて良いのです。 

 

保証協会を利用することによって、銀行の利益を確保するににも役立つのです。

やってはいけない!! 保証協会でのNG行為

保証協会付き融資は、銀行にとっていいこと尽くしの
ように見えますが、
ひとつ大きな落とし穴があります。

 

それは、銀行員なら誰もが恐れおののく
「保証免責事項」というものです。

 

保証協会に提出する「信用保証委託申込書」には、
借入希望望額や使い途などの
条件を記入する欄があります。

 

・設備資金として5,000万円を借りて、7年で返済する

 

保証協会は、この条件に基づき審査を行い、問題がなければ保証を請け負うことになります。

 

ところが銀行が、

4,950万円しか融資を出さなかった

・借入期間を7年から8年に勝手に変更した

 

こうした事実が判明したら即アウト、保証協会と交わした契約はすべてチャラになってしまいます。

 

つまり貸出先が万が一、返済できないということになったとしても、
保証協会が
保証してくれなくなるのです。

 

これが、銀行員が最も嫌がる保証免責事項です。

「資金使途違反」は最大級の裏切り行為

事務手続上の手違いで、「保証免責事項」となることはありえません。

 

問題は、企業による資金使途違反です。

 

 

たとえば、

 設備資金として借りたお金が、運転資金に使われていた…。

 

この場合、保証協会の保証は解除されてしまいます。
つまり、銀行員が最も嫌がる免責となってしまいます。

 

担当した企業が免責事故を起こしたら、銀行員は十中八九、飛ばされます。
当然、出世にも響きます。

銀行内での将来がかかっているわけですから、銀行員がビビるのは当然です。

 

経営者が黙っていれば銀行に知られることはないと思うかも知れませんが、
翌年度の決算書を見れば一発でわかります。
 

 

たとえば、設備資金(機械購入)が運転資金に流用してしまったら、
決算書の機械装置の欄を見れば、資金流用だと分かってしまいます。

 

保証協会は資金使途違反に対し、非常に厳しく、
一度でも違反した企業は、
保証審査が通らなくなりますので、ご注意ください。

 

 

「旧債振替」も免責事項

保証が免責になるのは、こういったことだけではありません。

旧債務の振り替えというものがあります。

 

旧債務とはプロパー融資のことです。

つまり「旧債務の振り替え」とは、
現在銀行から受けているプロパー融資を
保証協会付き融資に振り替える
ことを言います。

 

実は、けっこうやられているんです。巧妙な手口で。

 

たとえば、現在銀行からプロパーで5,000万円借りているとします。

あるとき、担当の銀行員がこう話を持ちかけてきたとしましょう。

 

「現在、当行から受けている融資の残りを一度、売上の入金で全額返してもらえませんか?
 その代わりに保証協会付きで、8,000万円の融資を出します。 
 どうですか社長? 
運転資金が足りていないんじゃないですか?」

 

間違っても、「3,000万円も余分に借りられるからいいかな」と思って、
話に乗ってはいけません。

 

 

このようにして、保証協会という保険がついていないプロパー融資をいったん回収し、
保険付きの融資にすり替える
のです。

(お金の入りと出を分からないように)

 

保証協会では、旧債務の振り替えを禁止しています。
これが保証協会にバレたら一発で免責扱いとなり、保証を取り消されます。

 

では、なぜ銀行は保証免責のリスクを冒してまで「旧債務の振り替え」をしたがるのか?

 

答えは簡単です。

より、リスクヘッジをしたいからです。

 

一度やってしまったら、今後プロパー融資を出してもらえない可能性が高くなります。

 

「旧債務の振り替え」にあたる提案は意外と少なくありません。
ですが、最終的には間違いなく御社のクビを締めることになりますので、
十分気を付けてください。

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